こんにちは。
シンガーソングライターの福島亮介です。

 

今回の曲はスピッツの「スピカ」

楓との両A面 両曲の人気から、楓派/スピカ派という言葉が生まれるほど。「幸せは途切れながらも続くのです」多く引用もされていて、パッと聞いただけでも耳に残る心強い歌詞ですよね。曲調的にもサビの広がりで視界がクリアになるような感じがとても気持ちよく、そして早い展開の曲構成が何回でも聴きたくなる衝動を駆り立てます。

曲の始まりから草野さん特有の比喩が連発ですが、歌詞全体を見渡すと独り世界から取り残されているような気持ちになっている主人公が今の時代や自分の気持ちと向き合い、そこから感じていることが歌になっているような印象を受けます。

そして更に詳しく歌詞を読み進めてみると、それだけではなく主人公の世界や『君』の見方、価値の感じ方などの変化が生まれ、そこから人生に意味を見出し幸せについて前向きに捉えることができるまでのストーリーが見えてきます。

それでは今回も詳しく歌詞をじっくり見ていきたいと思います。

 

 

 

楽曲情報


■スピッツ「スピカ」
19th Single
両A面 楓/スピカ
発売日 1998年7月7日
収録アルバム 花鳥風月
作詞 草野正宗
作曲 草野正宗
プロデュース スピッツ/棚谷祐一
MV https://www.youtube.com/watch?v=skTm1_kwR8w




 

歌詞解釈




【Aメロ】幸せの気付きと『君』へのメッセージ






この坂道もそろそろピークで
バカらしい嘘も消え去りそうです
やがて来る 大好きな季節を思い描いてたら
ちょうどいい頃に素敵なコードで
物凄い高さに届きそうです
言葉より 触れ合い求めて 突き進む君へ

出典:http://j-lyric.net/artist/a000603/l00021b.html

>この坂道もそろそろピークで
>バカらしい嘘も消え去りそうです
ここで言う「坂道」は、今まで主人公が感じてきた社会への不満や理不尽な風潮など。そして「バカらしい嘘」は日常で飛び交う根も葉もない噂、テレビやネットで流れる疑わしいニュースや批評など。

そんな坂道がそろそろ終わりを迎えバカらしい嘘も気にしないようになれそうという、主人公の晴れ晴れした気持ちが表れている希望的な始まりです。

>やがて来る 大好きな季節を思い描いてたら
続くここからの歌詞でも、主人公の前向きな心境が伝わってきます。スピカはおとめ座を構成するひとつの恒星で、春の夜に輝くとても明るい一等星。ここから「大好きな季節」とは春ではないかと連想できます。



>ちょうどいい頃に素敵なコードで
>物凄い高さに届きそうです
ここも多くの解釈ができそうですが、「素敵なコード」はギターやピアノで奏でるコード(和音)、そしてそのコードに乗せて自分でも驚くような高い音域まで声が届きそう。つまり、今までできなかったことができるようになった喜びや成長を感じていることの比喩ではないでしょうか。

少しまとめると、多くの始まりを告げる春という季節を思い描いていたときふとした瞬間に今までの自分から新しく成長した自分に気付き、そこに幸せな気持ちを感じているということではないかと思います。

>言葉より 触れ合い求めて 突き進む君へ
そしてここの歌詞でAメロで主人公が感じた幸せな気持ちを『君』に伝えようする様子が見られます。ここでの『君』は、特定のひとりとも考えられますが、「今の時代や社会を生きる人」という総称としても捉えることができそうです。



「言葉より触れ合い求めて」、これは周りに溢れているようなわかりやすい幸せばかりを求めて自分が気付くべき本当の幸せを見失ってしまっている状態。つまりこのAメロは、わかりやすい幸せばかりを求め突き進む『君』へ、自分が気付いた本当の幸せについて伝えたいと主人公が感じている場面なのではないでしょうか。



【サビ】「せつないときめき」の正体と手に入れたゆとり






粉のように飛び出す せつないときめきです
今だけは逃げないで 君を見つめてよう
やたらマジメな夜 なぜだか泣きそうになる
幸せは途切れながらも 続くのです

出典:http://j-lyric.net/artist/a000603/l00021b.html

そして間を空けずサビへ続きます。

>粉のように飛び出す せつないときめきです
>今だけは逃げないで 君を見つめてよう
パンパンに粉が詰まった袋に穴を開けたときに一気に飛び出す様子が、自分でも止められない気持ちを表しています。そしてその気持ちの正体は「せつないときめき」。ときめきとは期待や喜びで胸が高鳴るような状態のことですが、このとき主人公が感じたときめきには切なさが含まれています。

「今だけは逃げないで 君を見つめてよう」ということは、今までは目をそらしてきてしまっていたということ。この今まで目をそらしてしまっていた理由こそが「せつないときめき」の要因にもなっていると考えられます。その理由とは何でしょうか。

それは、先のAメロで見た「言葉より触れ合い求めて突き進む君」にあります。本当に大切なことを見失いわかりやすい幸せを求めてしまう『君』を思うと、切なさを感じたりでもいつかは正しい気付きを得てほしいという期待を持ったり、それらが入り混じった複雑な気持ちが「せつないときめき」と表現されています。



この複雑な気持ちを知っている主人公は、それが理由で今まではそんな『君』から目をそらしていました。でも今回は「今だけは逃げないで 君を見つめてよう 」と言い聞かせています。ここにもAメロで見た「この坂道」や「バカらしい嘘」を乗り越え、希望的に前向きに物事を捉えられるようになった主人公の心境の変化が表れているのかもしれないですね。

>やたらマジメな夜 なぜだか泣きそうになる
>幸せは途切れながらも 続くのです
そしてそんな真面目なことを考えている自分にふと気付く主人公。泣きそうになる理由は「なぜだか」と自分でもわかっていません。おそらくは逃げないで『君』を見つめてようと思えるようになった自分への喜びやまだ消えない「せつないときめき」が入り交じった、自分でも出所がわからない感情によるものではないでしょうか。



どんな理由であれ、気持ちが落ち着いたときに感じたことは「幸せは途切れながらも 続くのです」ということ。このまとめはAメロで感じた自分の成長や変化に伴い感じる幸せを指していて、これからも変わり続ける価値観や正義、善悪の基準や物の見方など。その都度そのときにしか得ることができない幸せがありその幸せは途切れながらもずっと続くもの、という自分へのメッセージであり大きな心のゆとりが生まれた瞬間でもあります。



【Aメロ2】はぐれ猿の心境の変化






はぐれ猿でも調子がいいなら
変わらず明日も笑えそうです
ふり向けば 優しさに飢えた
優しげな時代で

出典:http://j-lyric.net/artist/a000603/l00021b.html

> はぐれ猿でも調子がいいなら
> 変わらず明日も笑えそうです
「はぐれ猿」とは一般的に社会や集団の和からはずれ孤立している状態の人のこと。今まではそんな自分の状態を嘆きながら先のAメロでみた「坂道」や「バカらしい嘘」を感じていました。ですが、ここまでの気持ちの変化を経たことで「変わらずに明日も笑えそうです」と前向きな気持ちに変わっていることがわかります。

たとえ自分がはぐれ猿だとしても、ひとつ自分の中に幸せを見つけたことでまた楽しい明日を予想できる。そんな世界観の変化、自己肯定感の高まりを伝えている大切なシーン。



> ふり向けば 優しさに飢えた
> 優しげな時代で
そして、変わらず明日も笑えるその舞台となる自分の日常の見え方も変わってきます。今まで意識することなく淡々と過ごしてきた日常も、振り向けばそれは「優しさに飢えた優しげな時代」であると感じるようになった主人公。

ここで「優しさに飢えた優しげな時代」から感じ取るべき意味が重要になってきます。優しさに飢えていて、そして「優しげな」という歌詞から優しそうに見えるけど本当は優しくはない時代。主人公は今の時代をそう感じています。

これは諦めのよう表現にも取れますが、目を向けるべきはそんな時代だと理解しながらも「明日も笑えそう」と主人公が感じていること。今までは時代や周りの風潮に飲まれただはぐれ猿な自分を嘆くばかりでしたが、そんな時代の中でも前を向いて生きていけると思えるようになった主人公の心境の変化がここでは重要なメッセージになっています。



自分の中に生まれた一つの幸せからゆとりが生まれ物事の見え方が変わり、こんな時代でも前を向いていけると感じられるようになった主人公。そしてこの変化がこの曲の本質である「幸せは途切れながらも続くのです」というまとめにもつながっていくのではないでしょうか。



【サビ2】「割れもの」と「古い星の光」の意味






夢のはじまり まだ少し甘い味です
割れものは手に持って 運べばいいでしょう
古い星の光 僕たちを照らします
世界中 何も無かった それ以外は

出典:http://j-lyric.net/artist/a000603/l00021b.html

> 夢のはじまり まだ少し甘い味です
> 割れものは手に持って 運べばいいでしょう
ひとつ幸せを見つけた自分の新しい人生、ここの「夢」はそんな明るい未来を想像させる毎日を比喩しています。そして何でもやり始めは楽しいように、始まったばかりのこの新しい日々もまだ希望に溢れている状態であることが「まだ少し甘い味です」と表現されています。

ここで言う「割れもの」とは主人公が見つけた大切な幸せであると考えられますが、「割れものは~」の前に"でも"を入れると意味がしっくりきます。「まだ少し甘い味です」という歌詞から、主人公はこの新しい日々にもいずれは苦悩や挫折がやってくるということを覚悟しています。"でも"、そんなときも割れものは手に持って運べばいいでしょうと自分に言い聞かせています。

幸せに気付き希望的な毎日が始まったが、いずれはこの日々にも辛い出来事が起こる。でもそのとき自分が見つけた大切な幸せを見失わずにいられたら、辛い出来事も乗り越えていけるだろう。ここではそんな主人公の強い意志を表しているように思います。



> 古い星の光 僕たちを照らします
> 世界中 何も無かった それ以外は
今見ている星の光は、星が遙か遠くにあるため何年~何百万年も前に発せられた光だと言われます。そのことを踏まえてこの歌詞を見ると込められたメッセージが見えてきます。何百年前に発せられた光が長い時間をかけてようやく僕たちを照らす、そしてその光が発せられた何百年前には世界中にはまだ何もなかった。やがて届くだろうその光の兆し以外は。

これはまさに今の主人公の心境を表している歌詞。すでに生まれている幸せは確かにあって、今回もそうだったようにそれに気付くまでには相応の時間がかかるということ、そして今は幸せを感じられない毎日であってもやがて気付くだろう幸せが必ずあるということ。

今回気付いた幸せが主人公の心境に変化をもたらしたのは言うまでもなく、こう考えられるようになった主人公の毎日は充実して実のあるものに変わっていくというい期待も持たせてくれます。そしてこの歌詞もまた、「幸せは途切れながらも 続くのです」に繋がっていくのです。



【Bメロ~サビ3】今の心境を表す前向きな情景






南へ向かう風 流れる雲に
心の切れはしを 託したならば 彼方へ…

粉のように飛び出す せつないときめきです
今だけは逃げないで 君を見つめてよう
やたらマジメな夜 なぜだか泣きそうになる
幸せは途切れながらも 続くのです 続くのです

出典:http://j-lyric.net/artist/a000603/l00021b.html

「南へ向かう風」「流れる雲」、どちらも穏やかで平和的な印象を持てます。これは主人公の今の気持ちが表されていると考えられますが、ここに託そうとしている「心の切れはし」とは何でしょうか。ひとつ挙げるとすれば、それはおそらく1番と今回のサビで登場するまだ心から消えないせつないときめき」ではないかと思います。

1番のサビで周りに溢れたわかりやすい幸せを求めてしまう『君』に切なさを感じたり、今の自分のように本当の幸せに気付いてほしいという期待を持っていた主人公。そこから生まれた「せつないときめき」がまだずっと心の片隅に残っていて、1番のサビでは「やたらマジメな夜なぜだか泣きそうになる」こともありました。



ただ今はそんな「せつないときめき」すらも、この穏やかな気持ちに素直になることで彼方へ追いやってしまえそう。そう思えるほど前向きな姿勢になっている主人公の心境の変化をここでも見ることができます。

そしてあらためてサビが繰り返されエンディングへ。曲の終盤にかけてどんどん主人公の気持ちが晴れていく情景が見えることで、1番で見るよりも「幸せは途切れながらも続くのです」という歌詞に価値や現実味が生まれ、より頭に入ってきますね。

 

最後に





今回は、さえない毎日を送る主人公が日常の中に自分の幸せを見つけたことで世界や『君』の見え方、価値の感じ方などに変化が生まれたということ。そしてそのおかげで人生に意味を見出したり、物事を前向きに捉えることができるようになったというストーリーとして見てきました。

1番Aメロで、今までできなかったことができるようになった喜びや成長を感じているようなシーンはありますが、主人公の感じた幸せについて曲中で具体的に書かれている箇所はありません。ですが今回そこは重要ではなく、感じ取るべきことは誰の幸せも既にそこに生まれていて、後は自分がそれに気付くことができるかどうかということ。

誰の中にも何百年前から照らし続けているスピカの光があり、その光を感じることで日常にある幸せの形が見えてきます。そしてそれは途切れながらもずっと続いていくもの。



心にゆとりを持つことが難しい現代ですが、この主人公のようにスピカからの光を感じて自分の中に幸せを見つけ、大切な毎日を過ごしていきたいですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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