こんにちは。
シンガーソングライターの福島亮介です。

今回の曲は平井堅さんの「瞳をとじて」。
映画「世界の中心で、愛を叫ぶ」の主題歌としても有名な珠玉のバラードです。きれいなメロディや平井さんの柔らかく澄んだ歌声で曲から伝わる哀愁が一層際立ちますよね。そして歌詞から伝わるのは別れや孤独、失った『君』を思い出とすることができない主人公の心情。
ドラマの影響もありますが、その別れもケンカ別れや成長に繋がるような前向きな別れではなく、意思とは関係なく二人の時間を強制的に奪う死別。そして残された主人公が『君』を失った事実と向き合い『君』がくれた時間と乗り越える強さを持って生きていく。そんなストーリーが浮かぶ曲です。
今回も歌詞を読み進めながら、この曲が伝えるメッセージを詳しく見ていきたいと思います。
目次
楽曲情報
■平井堅「瞳をとじて」
20th Single
B面 DESPERADO
発売日 2004年4月28日
収録アルバム SENTIMENTALovers
作詞 平井堅
作曲 平井堅
編曲 亀田誠治
LIVE https://www.youtube.com/watch?v=IDi7gd_O89w

歌詞解釈
【Aメロ】主人公の悲痛な心理描写

出典:https://www.utamap.com/showkasi.php?surl=B06493
>朝目覚める度に 君の抜け殻が横にいる
>ぬくもりを感じた いつもの背中が冷たい
すでに『君』が亡くなった後のシーンからの始まり。朝目覚める度にその事実を痛感している主人公という、出だしから悲しい風景を連想させます。「君がいない」ではなく「君の抜け殻が横にいる」という表現が、話すことも触れることもできない『君』をただ感じている主人公というより残酷な状態を伝えているようです。
>苦笑いをやめて 重いカーテンを開けよう
>眩しすぎる朝日 僕と毎日の追いかけっこだ
目が覚めて少しずつ夢から現実へ頭や視界が切り替わり、今日も『君』を失った事実を突きつけられる主人公。それにただ従うように苦笑いをやめてカーテンを開けます。「重いカーテン」というのも、『君』のいない新しい1日の始まりを拒むような辛い印象を受けます。
朝日が眩しすぎると感じるのは、今の主人公の心がその希望的な明るさに耐えられるほど健全ではないから。もちろんその理由は『君』との死別。眩しい朝日から始まり繰り返される『君』のいない日常、それは今の主人公にとって温度もなくただすぎていくだけの時間の経過です。それが永遠にも続くように感じられ、「追いかけっこ」と表されているのではないでしょうか。
【Bメロ】せめぎ合う意思と記憶

出典:https://www.utamap.com/showkasi.php?surl=B06493
>あの日見せた泣き顔 涙照らす夕陽肩のぬくもり
>消し去ろうと願う度に 心が体が君を覚えている
「夕陽」「肩のぬくもり」という歌詞から、日暮れ頃にベンチなどに並んで座り主人公の肩にもたれて泣いている『君』が浮かびます。たくさんある二人の時間の中からこのシーンを思い出す主人公。もしかしたら『君』が死への恐怖を露わにしてまだ生きたいと泣き崩れるような、主人公にとって強烈に記憶に残る時間だったのかもしれません。
そしてそんな辛い思い出を何度忘れようとしても『君』が染み着いた心が体がそうさせてくれない、やり場のない苦しみから抜け出せない主人公の様子が描かれています。また「心が体が君を覚えている」という歌詞からも、生前どれほど主人公が『君』を愛しその存在が大きかったかが伝わってきますね。
【サビ】あなたの愛は永遠に

出典:https://www.utamap.com/showkasi.php?surl=B06493
>Your love forever
>瞳をとじて君を描くよそれだけでいい
>たとえ季節が僕の心を置き去りにしても
日本中を感動に巻き込んだ一度聴いたら忘れられない壮大なサビです。「Your love forever」は直訳すれば「あなたの愛は永遠に」。この曲のサビ頭で繰り返し使われるこの一言がこの曲の伝えているメッセージのすべてであり、それはそのまま主人公が心に秘めて生きていく想いでもあります。
このサビは『君』を失ってその事実を受け入れられず、周りから取り残され「いいからほっといてくれ」とふさぎ込んでいるような様子にも見て取れます。ただ、詳しくは後ほど見ていきますが歌詞を読み進めるにつれてそうではないことがわかってきます。

ここで言う「それだけでいい」というのは、投げやりなものでも諦めでもありません。ただ瞳をとじて君を描くことでいつでもあの頃の『君』を感じることができるという、『君』のいない日常を生きていく主人公の切なくも前向きな姿勢の表れです。
こんな自分の心境などお構いなしに世界は回り季節は変わり続ける。それでもかまわない。何度でも瞳をとじて『君』を感じながらこの先も生きていく。という主人公の意思も感じます。そしてそれが「あなたの愛は永遠に」に繋がりこの曲のテーマをより濃くしてます。
【Aメロ2~Bメロ2】未来への恐怖、現在の孤独

出典:https://www.utamap.com/showkasi.php?surl=B06493
>いつかは君のこと なにも感じなくなるのかな
>今の痛み抱いて 眠る方がまだいいかな
ドラマや映画などで見る死別した恋人や夫婦などの未来。主人公の脳裏にそれらが過ぎったのかもしれません。いずれは現実にも慣れそれが日常となり、些細なことに幸せを感じたり何か目標を持ったりと人生に彩りが出てくる。それが『君』のいない日常にも関わらず。
そんな未来に怯えているような、そして『君』を忘れるくらいなら辛い今を受け入れようとしているような主人公の哀しい姿が浮かびます。そして続くBメロから、主人公の中の『君』が今も変わらず大きな存在であることがわかります。

>あの日見てた星空 願いかけて二人探した光は
>瞬く間に消えてくのに 心は体は君で輝いてる
ここでかけられている願いはおそらく末永く続く二人の未来。目に見える光ならすぐに消えて見えなくなるのに、いつまでも自分の心や体は『君』で輝いている。この対比から、果たされなかった願いの儚さといつまでも『君』を忘れられない主人公の孤独が伝わってくるようです。
あの日探した光が瞬く間に消えていくように、自分の心の中からも『君』の存在を消し去ってしまいたい。そんな気持ちとそれでも『君』を想い続けてしまう主人公の姿がより辛い現状を物語っています。
【サビ2】『君』と生き続ける未来

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>I wish forever
>瞳をとじて君を描くよそれしか出来ない
1番のサビ「Your love forever」に対して今回の「I wish forever」。永遠を願う気持ちという共通点はありますが、これらの願いは2つで1つのものなのかなと感じられます。
つまり、自分にとってあなたの愛が永遠であること、褪せることなく心に『君』が居続けること。そしてそれが永遠に続いていくこと。そう願っているのではないでしょうか。
そして強く願えば願うほど、『君』が記憶から薄れることを恐れ拒み「瞳をとじて君を描くよそれしか出来ない」という行動に繋がっていきます。

>たとえ世界が僕を残して過ぎ去ろうとしても
そう願い続けることで世界から取り残され、自分が先に進めなくてもいい。主人公は『君』を忘れひとり成長していく未来より、『君』を描き続け共に生きる未来を選択したのでしょう。
1番のAメロであった「君の抜け殻」や「ぬくもりを感じたいつもの背中が冷たい」という悲壮感を感じるシーンと比べて、このサビでは強い意志を持って未来を見ている主人公を想像できます。それは恐らく『君』を失ったことを受け入れた上での意思、覚悟だからではないでしょうか。
【サビ3】主人公が出した答え


Your love forever
瞳をとじて君を描くよそれだけでいい
たとえ季節が僕を残して色を変えようとも
記憶の中に君を探すよそれだけでいい
なくしたものを越える強さを君がくれたから
君がくれたから

出典:https://www.utamap.com/showkasi.php?surl=B06493
>記憶の中に君を探すよそれだけでいい
>なくしたものを越える強さを君がくれたから
>君がくれたから
この曲はただの寂しく暗い話ではなく、これからの主人公と主人公の中に生き続ける『君』の始まりを描いた物語。そう思えるのは、この最後の大サビがあるからこそ。
「瞳をとじて君を描く」「記憶の中に君を探す」。それぞれ別の言い方ではあるものの、行き着くところは同じ。それはこれからも『君』と共に生きていくという決意。そして「それだけでいい」と自分に言い聞かせるような言い回しも、「いつでも『君』は自分の中に生きている。もう過去を振り返ったり嘆いたりする必要はないんだよ。」とこれからの自分に明るい未来を見せようとしているような優しい一言のような印象があります。

そして最後を締める一文「なくしたものを越える強さを君がくれたから」。なくしたものとは『君』そのもの、そしてその失った苦しみを乗り越える強さをくれたのも『君』。
一見解釈に迷うところですが、
このように考えるとしっくりくるような気がします。
失った未来の『君』、その苦しみを乗り越える強さをくれたこれまでの『君』。これから主人公は「瞳をとじて君を描く」度に「記憶の中に君を探す」度にこの未来と過去の『君』が自分の中に生き続けていることを実感します。

そしてそれは『君』が主人公の中で永遠になったことの表れであり、だからこそ主人公は「それだけでいい」と何かに納得するように安心するように気持ちを整理することができるのではないしょうか。
1番のBメロのように無理やり記憶を消し去ろうとするでもなく、2番Aメロのように『君』のいない日常や未来に怯えるでもなく、自分の中で永遠となった『君』とこれから共に生きていく。それが主人公が出した最後の答えなのです。
最後に

映画「世界の中心で愛を叫ぶ」の主題歌ということもあり、今回は『君』との死別から主人公がそれを受け入れ未来を見て生きていくまでというストーリーとして見てきました。
大切な人を失い、ただ時間が解決するのではなくその事実と向き合い想い続けることで見つける強さ。それがこの曲の聴きどころでありメッセージなのではないかと思います。
これから瞳をとじて何度でも『君』を想い続け、だからこそ主人公だけが得られる幸せに辿り着けることを願いつつ終わりにしたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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