こんにちは。
シンガーソングライターの福島亮介です。


今回の曲はaikoさんの「シアワセ」
この曲は『あなた』とベッドの中にいる主人公が眠りにつくまでの一夜の話。その短い時間の中で、隣ですでに眠っている『あなた』を見つめながらいろいろな想いを巡らす主人公の心情がストーリーになってます。

まず最初に不安を感じそこから前向きに働く心があり、「思わずキス」をしたその理由を知り、その後に主人公を待っている大きな価値観の変化を見ていきます。そして後半には「今日も大好きでした」からわかる確固たる信念や愛情経て、主人公が今思う「シアワセ」へと辿り着きます。

主人公がベッドの中で「シアワセ」へと進む道のり、そしてその過程で見られるたくさんの心の動き。今回も歌詞をじっくり読んでそれらを徹底的に解析していきたいと思います。

 

 

 

楽曲情報


■aiko「シアワセ」 
21th Single
B面 リップ/朝の鳥
発売日 2007年5月30日
収録アルバム 秘密
作詞 AIKO
作曲 AIKO
編曲 島田昌典
MV https://www.youtube.com/watch?v=fp-yJUB7sS8




 

歌詞解釈




【Aメロ】不安から安堵へと向かう心の働き






隣で眠ってるあなたの口が開く そして笑った
どんな夢見てるの?気になる…
出来ればあたしが出てきたらいいのに
隣で手を繋いだあなたの左手少し汗をかいてた
だけど 同じくらいあたしの右手温かかった

出典:https://www.uta-net.com/song/53774/

>隣で眠ってるあなたの口が開く そして笑った
>どんな夢見てるの?気になる…
>出来ればあたしが出てきたらいいのに
まず出だしの歌詞からわかるのは、一緒に寝ている『あなた』はすでに眠りについていて、隣で主人公が『あなた』の顔を見つめているという描写。

ここからは、一見恋人の寝顔を見つめながら横たわるかわいらしい女の子をイメージできます。ただ、眠りながら笑う『あなた』を見てどんな夢を見ているのか気にしている様子や、その夢に自分の登場を願っていることなどから、ひとつの主人公の心理が見えてきます。それはこのかわいらしい描写に隠れた不安や疑いです。

『あなた』がとった表情は難しい顔でも怒ったような顔でもなく笑顔です。主人公はその笑顔に対してどんな夢を見てるのか気になり、自分がその夢に出てくることを願っています。


険しい顔をしていればどんな夢を見ているか気になり不安にもなるでしょう。しかしその笑顔、つまり『あなた』の幸せを感じ取るべき一面に対して「自分が出てきたらいいのに」という不安を抱きます。もしかしたらその夢には他の女の子が登場しているかもしれない、その笑顔は自分に向けられたものではないのかもしれない。

この微笑ましくかわいらしい描写からは、そんな自信のなさや不安の影も伝わってくるのです。しかし次の場面から、その不安に対して前向きに意識を変えようとする心の動きが見られます。ひとつずつ見ていきます。

>隣で手を繋いだあなたの左手少し汗をかいてた
>だけど 同じくらいあたしの右手温かかった
まずここで注目したいのが"だけど"という接続詞。汗をかいて温まっている手を握ったら、もちろん自分の手も温かくなります。なのでここでは"だけど"ではなく"だから"と繋いだ方が意味としてはしっくりくると思います。

ではなぜ逆説の"だけど"が使われているのか。ここで思い出したいのが主人公の心の中にある不安や『あなた』の愛情に対する自信のなさです。それではそんな心境の主人公は、この"『あなた』の汗"から何を感じ取るでしょうか。そしてなぜ「あたしの右手温かかった」という歌詞に繋がるのでしょうか。


先に結論から言えばそれは『あなた』と自分が同じ人間であり同じ世界を生きているという、信頼や所属感による安らぎを得られたからです。どんな人であっても、物事をそのときの自分なりの主観で捉えます。客観的には同じ出来事でも、その人がどう捉えられるかによってポジティブにもネガティブにも意味が変わってきます。

不安を感じながら"汗"に接する主人公は、その"汗"をスポーツの後のような清々しく気持ちのよいものとは感じないでしょう。今の主人公にとっての"汗"は、自分の心境を表す不安や苦悩の象徴なのです。

『あなた』の顔は笑っていたので、客観的に見れば不安や苦悩とは結び付かないかもしれません。ただそれよりも今の主人公が自分の気持ちを前向きにするために必要だったのは、『あなた』が汗をかいてたという事実でありそこから自分と同じ不安を『あなた』から感じ取ることだったのです。

主人公は『あなた』も自分と同じように不安を抱え悩みを持つひとりの人間であり、そんな『あなた』と自分は今これだけ近い距離で時間・空間を共にしている。そんな安堵感を感じていて、その安堵感が「同じくらいあたしの右手温かかった」という歌詞に表されています。


ここまで見た上で"だけど"という接続詞の理由に戻ります。主人公が"汗"を不安や苦悩の象徴として捉えたのであれば、それは本来マイナスの意味を持つものであり安堵感につながるものではありません。ですが、今の主人公にとってはそれはプラスのものであり必要なものだったのです。なぜなら、そのおかげで今不安を抱える自分と"汗"をかいている『あなた』の心情を同一視することができるからです。

  • あなたの左手少し汗をかいてた
    "だけど"同じくらいあたしの右手温かかった

↓ ↓ ↓

  • あなたからマイナスの要素である不安や苦悩を感じ取った
    "だけど"自分と同じであることに安堵感を覚えた


まとめるとこのように言い換えられるのではないかと思います。こう考えると本来マイナスのものに安堵感を覚えるという逆説の意図がわかるように思います。『あなた』の夢に不安を感じていましたが、その不安を安堵へと変えるために自分と『あなた』の心情を同一視する方向に働いた主人公の心理。

続くBメロでは、主人公はその心理状態から納得できる行動に出ます。


【Bメロ】キスをした理由とその目的






見上げたら喉が愛しかったので
甘いキャンディーの事も忘れて
小さいあたしの唯一の特権 思わずキスをしたの

出典:https://www.uta-net.com/song/53774/

>見上げたら喉が愛しかったので
>甘いキャンディーの事も忘れて
>小さいあたしの唯一の特権 思わずキスをしたの
「見上げたら喉が愛しいという」歌詞から、主人公と『あなた』の身長差や、『あなた』にとても近い距離で寄り添っていることがわかります。「喉が愛しい」という表現は珍しく、aikoさん独特のリアルな描写ですよね。

今回はピンポイトで「喉」が挙げられていますが、ここは「口」でも「耳」でも『あなた』の一部であればどの部分でもよかったのでしょう。なぜなら、見上げたときに目に入った「喉」、主人公はそこに『あなた』のすべてを見ているからです。つまり物理的には「喉」にされたキスでしたが、その意識は『あなた』の身体や心、その全体にキスをしているのです。


「甘いキャンディー」は、本当に少し前にそれを舐めていた事実があるのかもしれないですが、ここでは「楽しいことや嬉しいこと全般を表す比喩」と考えるとわかりやすくなります。楽しいことや嬉しいことすらも忘れるくらい衝動的に"思わず"してしまったキス。ロマンチックな場面ですよね。

ここで「思わずキスをした」という行動について、少し掘り下げて考えたいと思います。「思わずキスをした」ことについての主人公の説明はこうです。見上げたら喉が愛しかった、だから甘いキャンディーの事も忘れて、「小さいあたしの唯一の特権」を使って思わずキスをした。

ただ少し見方を変えて心の内を探ると、キスをした理由について全く違う解釈ができます。「思わず」とありますが、人間の意識・無意識は矛盾していると思われてもひとつの目的に向かって補い合いながら進んでいくものとされています。

ここでいう主人公の目的は、不安や疑いを拭うこと、それを『あなた』の喉にキスをするという行動で示すことです。それを踏まて、少し見方を変えてみます。


  • 見上げたら喉が愛しかったから思わずキスをした
    小さいあたしの唯一の特権があるからキスをした

この説明の場合、もし見上げたとき喉を愛しく感じなったら、もし主人公が小さくなかったらそのときキスはできない、そもそも衝動的な感情は起きえないことになります。続いて順番を変えてみます。

  • キスをするために見上げた喉を愛しく感じた
    キスをするために小さいあたしの唯一の特権を使った

この順番で考えると、最初から主人公の中では『あなた』にキスをするという決断があって、そのために「見上げたら喉が愛しかったから」や「小さいあたしの唯一の特権だから」を口実として後付けしているように見ることができます。


つまりこれらはキスをするための理由として使われているだけで、もしかしたらその口実は「あなたの左手が少し汗をかいてたから」でも、「隣で眠っているあなたの口が開いたから」でもよかったのかもしれません。

主人公は「思わず」と止められない衝動のように感じていたかもしれないですが、こう考えると意識的にも無意識的にもキスをするために働いている主人公の心理がわかります。この不安を安堵へと変えようとする姿勢、『あなた』と自分の今に自信を持とうとする心の動き。リスナーはここに自分を重ねて共感できるのでしょう。 


【サビ】主人公の大きな変化と「シアワセ」の答え






二人周り流れるストーリー 生きてく為に泣くこともある
それがあたしを強くするならば これも一番の幸せなんです
二人何処かで廻るストーリー 生涯離れてしまっても
あなたの一歩になるならば 幸せに思える日が来るのです

いつから知ってたの?あたしの強い所 弱い所
黙って見ててくれたあなたと同じ青空に出よう

出典:https://www.uta-net.com/song/53774/

>二人周り流れるストーリー 生きてく為に泣くこともある
>それがあたしを強くするならば これも一番の幸せなんです
このサビでは、主人公の成長やひとつの境地に達する姿を見ることができます。そこに導いたのは、自分と『あなた』にとっての幸せとは何なのかに対する答え。

「これも一番の幸せなんです」。そう言い切る主人公の心には笑顔や楽しい出来事ばかりが映っているわけではありません。むしろ「生きてく為に泣くこともある」という苦悩や困難がベースにあります。

それを乗り越え自分が強くなることが、主人公にとっての幸せであると感じられているのです。そこに不可欠なのが『あなた』の存在であり、「二人周り流れるストーリー」です。続けて見ていきます。


>二人何処かで廻るストーリー 生涯離れてしまっても
>あなたの一歩になるならば 幸せに思える日が来るのです
更に続く歌詞でも、離れてしまってもこれまでの自分との時間が『あなた』の一歩になるならばそれは自分の幸せになると感じられています。

「二人周り流れるストーリー」が過去の視点であれば、今回の「二人何処かで廻るストーリー」は未来への視点。そしてこのすべての時間軸から主人公は幸せの気付きを得ているといえるでしょう。

過去の視点では、二人を取り囲み今まで流れていたストーリーから強さを知りそれが今の自分の幸せへとつながる。そして未来の視点では、今までの二人の時間がいずれ『あなた』の一歩になると思えることで、それもまた今の自分への幸せへと還元されていきます。

ここでひとつ疑問が浮かびます。それはどうして主人公はここまで明確な幸せの答えを出すことができたのかということ。そこには大きく分けて2つの変化が起きていて、その変化が答えへと導いています。そのひとつは「人生観の変化」、もうひとつは「幸福観の変化」です。詳しく見ていきます。


  • 1.人生観の変化

「心から相思相愛と思えるようになる」「結婚してひとつの人生を歩む」など内容はいくつかあるかと思いますが、これまでの主人公はそういったゴールばかりを見ていて、常に「今」はそのゴールまでの過程として捉えていました。

なのでそのゴールと現在とのギャップを感じ、いつまでもゴールにたどり着けないことに不安を抱いてしまっていたのです。Aメロで見た『あなた』が笑顔で見ている夢に対して不安を抱いていたのもその結果でしょう。これでは今を大切に思うことも、現状から幸せに気付くこともできません。

ただ主人公が幸せのひとつの答えとした「生きていく為に泣くこともあるがそれが自分を強くする」という考え方は、今をゴールまでの過程と見ていては導き出せません。幸せになるためには自分が強くなる必要がある、そのためには「今」直面している苦悩や困難と向き合い乗り越える必要がある。


これはつまり、人生に対して「ゴールへと向かう長い線に沿って歩いていく」という考え方から、「今の積み重ねが長い線となりゴールへと導いていく」と考え方が変わっていることを表しています。

これを今の主人公に置き換えると、相思相愛と思えるための過程として「二人周り流れるストーリー」を歩むのではなく、「二人周り流れるストーリー」を真剣に歩むことでその結果相思相愛であるふたりの世界がつくられるということです。

前者の考え方のままでは、きっと主人公は「生きてく為に泣くこと」を自分を強くするものとして受け止められず、ゴールまでのただの弊害と感じ途中で心が折れてしまっていたかもしれません。


  • 2.幸福観の変化

続いては幸福観の変化です。それはこれまで「自分に何をしてくれるのか」から幸せを感じていたのに対し、「相手に何をしてあげられるのか」によって幸せを感じられるようになったという変化です。

Aメロで主人公が『あなた』の夢から不安を感じたり夢の中に自分の登場を願ってしまっていたのはなぜでしょうか。それは、『あなた』が自分に何をしてくれるのかという考えが前提にあったからです。

この考えが前提にあるとどうなるか、これまでの歌詞を思い出しながら見てみます。この考え方でも自分は愛されていると実感ができていれば、心は安定し『あなた』に不安や疑いを抱いたりはしないでしょう。


ただ『あなた』の愛情に少しでも疑いが生まれる、つまり「自分に何もしてくれない」と感じてしまうと、「自分を満たしてくれないあなた」を繋ぎとめようと不安になりその結果Aメロのように"汗"から自分と『あなた』の心境を同一視しようとたり、Bメロのように「思わずキスをする」という行動にも発展します。

このひとつひとつの行動には主人公なりの愛情や真剣な姿勢があるので、それ自体を否定することはできません。ただ、「自分に何をしてくれるのか」から幸せを感じようとする限り、幸せになれるかどうかは常に相手に委ねられていて自分ではコントロールすることができないのです。

それではここから主人公の大きな変化を見るために、もう一度サビの歌詞を見てみます。
>二人何処かで廻るストーリー 生涯離れてしまっても
>あなたの一歩になるならば 幸せに思える日が来るのです
これは「自分に何をしてくれるのか」から脱却し「相手に何をしてあげられるのか」から幸せを感じられるようになったことが表されています。


たとえ生涯離れてしまっても、自分とのこれまでの時間が『あなた』の一歩となることに幸せを感じられる。このとき主人公は『あなた』から何かをしてもらいたいという気持ちなどはなかったでしょう。ただ純粋に「相手に何をしてあげられるのか」から幸せを感じ取っていたはずです。

人生のあるべき姿、そして何をもって幸せとするか。この人生観や幸福観の変化によって主人公が大きく成長し、これから自分の能動的な働きによってより多くの幸せに気付けるようになるのは間違いありません。これが「どうして主人公はここまで明確な幸せの答えを出すことができたのか」の答えです。

>いつから知ってたの?あたしの強い所 弱い所
>黙って見ててくれたあなたと同じ青空に出よう
そしてサビを締めるこの歌詞。ここでもう一度振り返っておきたいのが、この曲は『あなた』とベッドの中にいる主人公が眠りにつくまでの一夜の話ということ。

ここまでベッドの中でいろいろな想いを巡らせてきた主人公が、ふと『あなた』の顔を見直す。そこにあるのは今までと変わらない寝顔です。でも不安や疑いを感じさせていたあの笑顔が、今の主人公にはまるで自分の強い所も弱い所も知っていて、ずっと黙って見守ってくれていた一番の理解者の微笑みのように映り変わっているのです。


変わったのは『あなた』ではなく主人公自身であるということ。そして「黙って見ててくれた」とあるように、『あなた』も誰かに何かをしてあげることから幸せを感じられる人なのだと、主人公が二人に同じ幸福観を見出していること。それがここの注目すべき点ではないかと思います。

たからこそ、最後は「あなたと同じ青空に出よう」という歌詞に繋がっていくのです。『あなた』と同じ愛し方、同じ世界の見方、同じ幸せの感じ方。それらがこの歌詞には総括されています。そしてそこにたどり着けたと感じられたことこそが、主人公にとっての「シアワセ」なのでしょう。


【Aメロ2】『あなた』への願いとは






愛し愛されて過ぎる大切な時 そして香った
あなたの呼吸の唄に走る小さな星に涙が出た
あたしのこの言葉が唇をまたいでいった後
意味を持ったままあなたの胸に残ってます様に

出典:https://www.uta-net.com/song/53774/

>愛し愛されて過ぎる大切な時 そして香った
>あなたの呼吸の唄に走る小さな星に涙が出た
「愛し愛されて過ぎる大切な時」は「愛し愛されて過ぎる大切な今」と置き換えることができます。ベッドの中で刻々と過ぎていく『あなた』との"今"を見て、それは愛し愛され過ぎていっているものという温かな実感を得られている主人公。その実感はまるでそこから香りを感じられるような、具体的でリアルなものです。

この「香った」という表現。それが目に見えない感覚的な安らぎや温もりなどをイメージさせることから、これからの人生に対しての広がり、希望的な未来を象徴しているような印象も受けますね。

続く歌詞で出てくる比喩表現や擬人法は多くの解釈ができそうですが、何を表しているのかひとつずつ考えていきます。


  • あなたの呼吸の唄に

これは広義的に解釈すれば「あなたの人生」を表している比喩。唄(歌)とはメロディやリズムを伴って発せられる声のこと。そこにはダイナミクスがあり音程やリズムのムラもあり感情の起伏もあり、人生の縮図のようにその人独自の表現が詰まっています。あなたの呼吸が生み出す唄、そこに主人公があなたの人生を見ていることが「呼吸の唄」と比喩されているのでしょう。

  • 走る小さな星に涙が出た

そしてそんな「あなたの人生」に向かって走っていく小さな星。この小さな星とは、『あなた』の人生に寄り添いたいと願う主人公自身のことです。それでは、なぜ「あなたの人生」に向かっている自分に対して涙が出るのでしょうか。その涙は何を表しているのでしょうか。

ここでもう一度、1番Aメロで「あなたの汗」から自分と同じ不安を読み取ろうとしたときの主人公の様子を振り返ってみます。主人公は不安や疑いを感じながら"汗"と接することで、『あなた』の顔は笑っていたにも関わらず、その"汗"を主観的に不安や苦悩の象徴として捉えていました。


同じようにここで登場する"涙"について考えてみます。主人公は、このとき愛し愛されて過ぎる大切な今を感じています。そしてこれまで見たように幸せの答えを導き出し、「あなたと同じ青空に出よう」と大きく前に踏み出せています。

そんな前向きな心理状態の主人公が"涙"に持たせる意味。それは怒りや悔しさ、憎しみであるとは思えません。そうなればもう答えはひとつ、この涙は喜びの涙であり、嬉しさ、安心感、肯定感、満足感などから生まれた健全な涙です。

『あなた』との時間から幸せの気付きを得て大きく成長できたこと。そしてそこから素直な気持ちで『あなた』の人生に寄り添いたいと思えていること。そんな小さな星=自分を思い浮かべて、そう思える自分に対して、主人公は喜びの涙を流しているのです。


>あたしのこの言葉が唇をまたいでいった後
>意味を持ったままあなたの胸に残ってます様に
ここで言う「あたしのこの言葉」が意味するもの、それは『あなた』への尊敬、信頼、感謝、そして愛です。それらの言葉が自分の口から『あなた』へ渡った後、その言葉に与えた意味が消えずに、その温度・鮮度を保ったまま『あなた』の胸に残っていてほしい。そう主人公は願いを込めています。

『あなた』へ伝える言葉。それが音や文字としてだけ伝わるのでなく、尊敬、信頼、感謝、そして愛の意味を持ったままあなたの胸に残り続けてほしい。

この願いにはこれらの意味を確かに伝える難しさを承知していること、そして伝わらないかもしれないという不安なども隠れていています。だからこそ『あなた』に向ける想いの本気さや真剣さがしっかり伝わってくるのでしょう。 


【Bメロ2】揺るがない信念と愛情






この指で弾いた息と気持ちを重ね
あなたに飛ばすの 響いて
新しい明日に繋がる想い「今日も大好きでした」

出典:https://www.uta-net.com/song/53774/

>この指で弾いた息と気持ちを重ね
>あなたに飛ばすの 響いて
「この指で弾いた息」。これは、「ハッ」と我に返ったとき、突然何かに気付いたときの「ハッ」という短い呼吸音を連想させます。先ほどのAメロでの主人公の様子を思い返すとこのイメージがしやすくなります。

先ほどのAメロで『あなた』の人生に寄り添いたいと思える自分について考えたり、『あなた』へ感謝や愛を伝えたいと願ったり。主人公は頭の中でたすら『あなた』のことを考えていました。そしてふと隣で眠っている『あなた』の寝顔を見て、そのときに「ハッ」と指で弾かれたように一度我に返ります。

そのときの息と、現実に戻ったことで溢れ出てくる気持ちを重ねて『あなた』に響くよう願いながら飛ばすのです。続く歌詞で、その気持ちについて具体的に歌われています。


>新しい明日に繋がる想い「今日も大好きでした」
その気持ちとは、新しい明日に繋がる想いであり「今日も大好きでした」という素直なメッセージ。これまで夢中で空想の『あなた』のことを考えていた主人公が目の前で眠る現実の『あなた』を見てふと我に返り、そこに向けて想いをぶつけようとする。思わず微笑んでしまいそうな、とてもドラマチックな場面ですよね。

この「新しい明日に繋がる想い」という表現も素晴らしいところ。ここからは、今日を今日としてしっかり終えて、明日を今日の続きとせず別の新しい1日として迎え入れるという、どこまでも「今」を大切にしている生き方であることがわかります。

そしてもうひとつ。
>新しい明日に繋がる想い「今日も大好きでした」
この歌詞には少しカラクリがあります。普通未来に繋げていくのはこの瞬間を生きている今です。今感じている「大好き」という気持ちを未来に繋げていこうとします。ですが、主人公が明日へ繋げていく想いとしているのは「今日も大好きでした」という過去形の表現。明日へ繋がった時点で、すでに「今日も大好きでした」と終わっているということです。


混乱しそうなので少し整理をすると、「今日も大好きでした」と言えるのは今日1日を大好きな状態で過ごし終えたときです。なので「今日も大好きでした」という過去系を明日へ繋げるということは、明日になった時点でその日が大好きな状態のまま終わっている状態ということになります。

つまりこれは新しい1日が始まったときにはすでに「その日を大好きな状態で過ごす」ということが確定されていて、その事実が絶対的で崩しようがないことを意味しています。

新しい明日になってたとえ世界の見え方が違っても、正義や善悪の基準が変わっても「今日も大好きでした」とその日を終えられるという自信。この歌詞からはそんな主人公の揺るがない信念、そして愛情が伝わってきます。 


【サビ2】主人公が今思う「シアワセ」






二人周り流れるストーリー あなたがここに居てくれるなら
後悔せずに前を向いたまま 立ち止まる事も怖くないのです
二人何処かで廻るストーリー 静かに終わりが来たとしても
最後にあなたが浮かんだら それが幸せに思える日なのです

隣で眠ってるあなたの口が開く そして笑った
これが幸せ 今の幸せ ついて行くわ 眠ろう

出典:https://www.uta-net.com/song/53774/

今回のサビでも、主人公が幸せをどのように見ているか、何を幸せとして捉えているかが別の角度から歌われています。

>二人周り流れるストーリー あなたがここに居てくれるなら
>後悔せずに前を向いたまま 立ち止まる事も怖くないのです
『あなた』が居てくれるなら、後悔もしない、前も向いていられる、そして立ち止まる事も怖くない。これを「後悔=過去、前を向く=未来、立ち止まる=今」と分けて解釈するとここの歌詞から伝わるメッセージが具体的になります。

それは、主人公が『あなた』を感じることで過去~未来のすべてを受け入れ認めることができているということ。つまり、これは自分自身や自分の人生に価値を感じ受け入れることができているということです。


更に『あなた』を感じることで「後悔もしない」「前も向いていられる」そして「立ち止まる事も怖くない」。そんな風に強くいられる理由について考えてみると、主人公が「何を見て今を生きているか」「今を生きるために何を必要としているか」ということがわかってきます。

後悔をしたり前を向けなかったり立ち止まる事を怖れてしまう人。そういった人たちは、過去に起こった「結果や原因」を見て今を生きています。それらによって今の自分が在ると考えてしまいます。まさに今このとき、前を向くことから目を背けようとするために「結果や原因」を必要としてしまっているとも言えるでしょう。

特段意識はしていなくとも、失敗したことや恥ずかしい思いをしたこと、その理由や原因。そういった変えられないものに執着して、後悔をし前を向けず立ち止まる勇気も持てなくなってしまっているのです。


では今の主人公のように、後悔もしない、前を向くことも立ち止まることも怖れない。そんな強く健全な心を持った人が今を生きるために見ているもの、必要としているものとはなんでしょうか。それは、未来への「目的とその過程」だけです。その目的に向かう思考や姿勢が今をつくっていきます。

「過去の結果によって今がある」のではなく「未来の目的へ向かうために今がある」と考えることで、後悔する必要はなくなり、立ち止まることもそこまでの過程と思えるので怖れる必要がなくなります。過去に起こったことの被害者意識によって変えられない今に嘆くのではなく、これからつくっていく未来の創造者・当事者、そんな意識を持って今を変えられるものとして生きているのです。

この歌詞中に書かれていないふたりの多くの時間の中でも、主人公が『あなた』からどれだけ勇気や希望、生きる意味を与えられているかが伝わってくるようです。


>二人何処かで廻るストーリー 静かに終わりが来たとしても
>最後にあなたが浮かんだら それが幸せに思える日なのです
ここを1番のサビと見比べてみると、同じことが別の視点から歌われていることがわかります。

  • 【1番】
    二人何処かで廻るストーリー 生涯離れてしまっても
    あなたの一歩になるならば 幸せに思える日が来るのです

  • 【2番】
    二人何処かで廻るストーリー 静かに終わりが来たとしても
    最後にあなたが浮かんだら それが幸せに思える日なのです


「生涯離れてしまっても」「静かに終わりが来たとしても」とあるように、まず主人公が見ているのはそれぞれ未来のふたりです。続いて「あなたの一歩になるならば」「最後にあなたが浮かんだら」という歌詞の違い。これは一見違う内容に思えますがその本質は実は同じことが歌われています。それは他でもない"今このとき"主人公が幸せを感じているということ。

生涯離れてしまうとき、静かに終わりが来るとき、そのとき本当に「あなたの一歩になること」から幸せを感じられるのか。本当に「最後にあなたが浮かんだら」その日を幸せと思えるのか。それがどうなるかは誰にもわかりません。そのときが来たら、大きく取り乱しまた過去に縛られてしまうかもしれません。


ただ大切なことは、そしてこれらの歌詞の本質はそんなどうなるかわからない未来にあるわけではありません。それを"今"を過ごす主人公が確信できているという事実にあります。

「生涯離れてしまってもあなたの一歩になるならば 幸せに思える日が来る」と思えるほど"今"が幸せ。「静かに終わりが来たとしても最後にあなたが浮かんだら それが幸せに思える日なのです」と思えるほど"今"が幸せ。これ以上も以下もなく、これがすべてです。

最後のときからすら幸せを予想できる今。この今がずっと続く限り、このふたりには最後のときが訪れることはないのだろうなと思えます。


>隣で眠ってるあなたの口が開く そして笑った
>これが幸せ 今の幸せ ついて行くわ 眠ろう
これまでベッドの中でいろいろな想いを巡らせてきた主人公。そして隣で眠る『あなた』を見ると、そこには口を開けて笑っている寝顔があります。

これからふたりの間にたくさんの問題が起こり、厳しい課題にも直面します。ただ、今はそういった余計な考えは置いておいて、目の前にいるこの人と同じ時間を過ごせていること、このベッドの中で人生を共有していること。そこに素直に幸せを感じよう。

一周まわった想いと共に心が軽くなり、シンプルにふたりの幸せと向かい合えるようになった主人公の表情や姿を想像することができます。そして「ついて行くわ 眠ろう」という最後を締める歌詞。ここまでのストーリーはすべてここに繋がっています。


今の自分と『あなた』を受け入れ、ふたりの明るい未来に確信を持って、これからもずっと『あなた』についていく。そんな幸せを感じながら曲のラストと共に主人公は安らかに眠りにつきます。

時間にしてみたらおそらくあっという間の一夜の物語ですが、この時間が主人公にとってこれからの自信となり支えとなり、今まで以上にふたりにとって大切な「シアワセ」をつくり上げていくでしょう。 

 

最後に





ここまで主人公が眠りにつくまでの一夜の物語として、現実の『あなた』や理想の『あなた』、過去や未来の『あなた』などたくさんの『あなた』を見て多くの思考や感情を巡らす主人公を見てきました。そして、主人公の思う「シアワセ」を導き出すまでの過程にも触れてきました。

この曲から伝わる大切なメッセージは、人の幸せはひとつではなく様々な要素から成り立っているということ。そしてそれは他者や世界の変化を待ったり願ったりするのではなく、すべては自分が変わることによって気付けるものばかりだということ。

誰かに何かを与えることで気付く幸せ、誰かを心から信じて理解者・味方と感じられることで気付く幸せ、誰かと過ごす世界の中にしっかり自分の居場所を感じられることで気付く幸せ。これらはすべて自分の変化で気付けるものばかりです。


これらが主人公の今の「シアワセ」をつくっていて、この体質がこれからも新しい形の「シアワセ」をつくり続けていきます。変えられないものばかりに執着をして幸せをただ願うものにするのではなく、自分から変えられるものに目を向けてすでにある幸せに気付いていく。それができる人間の素晴らしさを教えてくれる1曲ではないかと思います。

「これが幸せ」。そうはっきり言い切る主人公のように、これからの人生でしっかりと自分の幸せに気付いていきたいですね。今日、明日がその第一歩となることを願っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

  • はてなブックマークに追加


Twitterで更新情報配信中

 

カバー動画