こんにちは。
シンガーソングライターの福島亮介です。

 

今回の曲は秦基博さんの「アイ」
タイトルが意味するカタカナの「アイ」。登場する主人公が『あなた』と出会うことで、この形が徐々に変わっていきます。

この曲の持つ優しく儚い雰囲気は秦さんの歌声や曲調だけではなく、歌詞からわかる「アイ」と「愛」の狭間で変わっていく主人公の現在、そして過去と未来、そのストーリーによって作られています。

哀しい境遇を想像させる始まりから感動のラストまで、この曲が伝えているメッセージをしっかり読み取っていきたいと思います。

 

 

 

楽曲情報


■秦基博「アイ」 
9th Single
B面 夜が明ける/エイリアンズ
発売日 2010年1月13日
収録アルバム Documentary
作詞 秦基博
作曲 秦基博
プロデュース 松浦晃久・久保田光太郎
MV https://www.youtube.com/watch?v=fP6di9opd00




 

歌詞解釈




【Aメロ】主人公の境遇と愛への葛藤






目に見えないから アイなんて信じない
そうやって自分をごまかしてきたんだよ

出典:http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=kt0323

>目に見えないから アイなんて信じない
>そうやって自分をごまかしてきたんだよ
この始まりからわかるのは、今までの主人公の境遇と愛に対して感じている葛藤の様子。主人公は今までおよそ「愛」と実感できるものを体験したことがなく、もしくは過去に大きな裏切りを受け、愛に対する不信感を持っていたのかもしれません。

ここでの「アイ」は「愛」を指していると考えるのが妥当ですが、カタカナで表されることで主人公がそれを「愛」だと認めていない、またあえて無機質なものと捉えているという様子が伝わり、「アイなんて信じない」という歌詞がより哀しくリアルに入ってきます。

ただ注目すべきは、「自分をごまかしてきたんだよ」の部分。この後の歌詞から主人公の毎日や心情が大きく変わってきますが、この始まりから既に「目に見えないから愛を信じないなんて、ただ自分をごまかしているだけ」とわかっていて、愛に対して素直になれないでいる自分にも気付いていたのではないかと思います。


【Bメロ】『あなた』との出会いで認める愛の存在






遠く遠く ただ埋もれていた
でも今あなたに 出会ってしまった

出典:http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=kt0323

そして続くBメロで愛に対する葛藤から抜け出す出来事が起こります。それは『あなた』との出会い。

>遠く遠く ただ埋もれていた
Aメロから考えると、埋もれていたのは愛への素直な気持ち。愛することや愛を受け入れること、至るところに確かに「愛」は存在すると認めること。愛を信じられない時間を過ごしていた主人公は、その気持ちを遠くへ埋もれさせていたと感じています。

>でも今あなたに 出会ってしまった
ここの始まりの「でも」は、そんな主人公の愛を認められずにいた気持ちにかかっています。「愛を認められずにいた、"でも"あなたに出会ってしまった」。つまり、「愛を認められずにいた、"でも"あなたに出会ったことで愛を認めることができた」ということ。

「~しまった」という失敗や後悔を連想させる言い回しも、ここではとても温かく優しい響きに聞こえますね。


【サビ】『あなた』による愛の受容と浸透






その手に触れて 心に触れて
ただの一秒が永遠よりながくなる 魔法みたい
あなたが泣いて そして笑って
ひとつ欠けたままの僕のハートが 
ほらじんわりふるえる

出典:http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=kt0323

『あなた』によって愛の存在を再確認する主人公と、『あなた』と過ごす時間が更にそれを浸透させていく様子が描かれています。

>その手に触れて 心に触れて
>ただの一秒が永遠よりながくなる 魔法みたい
ここの歌詞から、二人は恋人関係になっていると考えられます。『あなた』の手や心。これは『あなた』の全てを指していて、今まで愛を信じられずにいた主人公が『あなた』の全てを知ろうとする過程でその時間や空間が「ただの一秒が永遠よりながくなる魔法みたい」なものだと感じています。

そして永遠よりながく感じるほど「ただの一秒」には膨大な感情が込められていて、今の主人公にとってかけがえのない大切な時間であることがわかります。



>あなたが泣いて そして笑って
>ひとつ欠けたままの僕のハートが 
>ほらじんわりふるえる
「ひとつ欠けたままの僕のハート」、これはまだ愛に対する不信感を完全に拭いきれていない主人公の心の状態を表しています。ですが『あなた』が泣いたり笑ったりするそのひとつひとつの仕草や感情によって、主人公はそのひとつ欠けたはずのハートがその度に反応していることに気付きます。

愛への不信感から「ひとつ欠けたままのハート」を感じている主人公が、『あなた』から感じる愛に確かな影響を受けている。これは『あなた』の存在によって主人公の愛への認識が変わりつつあるという現れであり、「じんわりふるえる」度にその欠けた部分が補正されているという期待を持たせてくれる描写でもあります。

『あなた』によって信じることのできた愛の存在が、どんどん主人公に浸透していく様子がわかる心温まる場面です。


【Aメロ2】『あなた』によって美化される過去






ありふれた日々が アイ色に染まってく
はじめからあなたを 探していたんだよ

出典:http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=kt0323

ここからの歌詞は、前回のサビを経て『あなた』から愛の存在を認識した後の場面と考えるとストーリーがスッと入ってきます。

>ありふれた日々が アイ色に染まってく
>はじめからあなたを 探していたんだよ
ここでもまだカタカナのままの「アイ」。普段何気なく過ごしている毎日も、その日常に『あなた』がいることで徐々にアイ→愛へと認識が変わってきているような印象があります。

そして愛を信じられなくなったことも、長くその時間を過ごしてきたこともすべては『あなた』と出会うため。そして愛とは何かをもう一度思い出すため。深読みし過ぎかもしれないですが、「はじめからあなたを 探していたんだよ」という歌詞は、主人公にとって『あなた』がそれだけ絶対的な存在になっていることを表しているのではないでしょうか。


【Bメロ2~サビ2】愛しさ故の不安と恐怖






遠く遠く 凍えそうな空
そばにいてもまだ さみしそうに滲んだ

ただいとしくて だけど怖くて
今にもあなたが消えてしまいそうで 夢のように
僕を見つめて そっと笑って
瞳閉じてもまだ 伝わる温もりがたしかにあるのに

出典:http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=kt0323

>遠く遠く 凍えそうな空
>そばにいてもまだ さみしそうに滲んだ
このBメロだけを見ると、今までの温かい様子から寂しく切なげな様子へと雰囲気が一転しているように感じますが、これは人を愛する上で誰もが感じる心情。その理由が次のサビでわかります。

>ただいとしくて だけど怖くて
>今にもあなたが消えてしまいそうで 夢のように
主人公がBメロで感じている寂しさや切ない気持ちの理由は、『あなた』の存在や一緒に過ごす時間が消えてしまうことへの恐怖。『あなた』との出会いから愛の存在を受け入れ、『あなた』との時間からいくつもの幸せに気付くことができた主人公。そして次の段階として、この代わりのきかない唯一の時間もいつか消えてしまうのではないかという恐怖を感じています。



>僕を見つめて そっと笑って
>瞳閉じてもまだ 伝わる温もりがたしかにあるのに
そんな不安を打ち消すため、主人公は瞳を閉じます。そして確かに『あなた』が今いること、自分を見つめ笑っていること、そこから温もりを感じられることを願うように確かめているのです。

最後に余韻を残す「~のに」。ここからは「確かな温もりを感じられるのに、なぜ『あなた』が消えてしまうことへの恐怖を感じてしまうのか」、そんな自分でも思いのよらない不安にとまどっている様子が伝わります。またそれと同時に、今まで愛を信じられず過ごしてきた、言わば愛に不慣れな主人公という人間像も感じ取ることができます。


【サビ3】「アイ」から「愛」へ






その手に触れて 心に触れて
ただの一秒が永遠よりながくなる 魔法みたい
あなたが泣いて そして笑って
ひとつだけの愛が 僕のハートに 
今じんわりあふれる

出典:http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=kt0323

ここで初めて漢字で登場する「愛」。今までその輪郭がぼやけていてどこか他人事のように感じていた「アイ」が、それは間違いなく自分に向けられた「愛」であったということを主人公は確信します。

>ひとつだけの愛が 僕のハートに
>今じんわりあふれる
1番のサビで主人公は、どこか欠けていると感じていたはずの自分の心が『あなた』からの「アイ」でじんわりふるえる感覚に気付きます。そして今回のサビでは、『あなた』からの「愛」が今自分の心に滲み溢れているという感覚に変わっています。

これは主人公が愛の存在を認めることができたという何よりの表現であり、『あなた』の存在だけではなく『あなた』と一緒にいる自分の存在も確かなものと受け入れることができたという気持ちの昇華も表しています。

物語のクライマックスにして、希望的な未来を想像させてくれる素晴らしい最後ですよね。

 

最後に





『あなた』との出会いから少しずつ変わっていく心境、そして疑いを持っていた「アイ」から確かな「愛」の存在を信じ受け入れるようになるまで。聴き終えた頃に温かく優しい気持ちになる理由は、無意識にそのストーリーを感じ取り、それが自分事となっているからではないかと思います。

この曲を通して感じることは、誰かからの愛には今現在だけではなく過去や未来までもその色を変える力があるということ。そしてこの主人公のように誰の中にも「アイ」はあって、存在を受け入れた「愛」の前では誰でも素直な気持ちになれるということ。

人を愛し人に愛され、その中でしか気付くことができない自分の幸せはたくさんある。その大切さを教えてくれる貴重な1曲だと感じました。ふと愛に迷うときには、またじっくり聴き浸ってみるのもよいかもしれないですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

カバー動画